ミャンマー(ビルマ)難民に 冬物衣料を送る運動の意義・その背景について
[1] ミャンマー(ビルマ)難民の現状・背景
タイに逃れているミャンマー(ビルマ)難民は約13万人(2001年2月)で、16の難民キャンプが2千キロにわたるタイ・ミャンマー国境に点在している。1980年中頃から、ミャンマー国内の少数民族(主にカレン族)が難民としてタイ国内に流出しはじめたのは、主に二つの原因がある。1つはミャンマーの軍事政権と少数民族との対立から逃れてきた事。特に、95年にカレン民族同盟の拠点であったマナプローが陥落して以来、毎年1万人前後の難民が流出している。2つ目は、ミャンマー軍による少数民族カレン人に対する人権弾圧から逃れてきた事。ミャンマー軍は道路建設のために村民を強制的に働かせたり、米等の食料を提出させたり、家屋を焼き討ちして強制移住させるなどの行為を行っている。
またミャンマー国内には、国内避難民(ミャンマー国内において元々住んでいた地域を追われ、ジャングルで逃亡生活を送っている人々)が150万人ほど居るが、ミャンマー国内における国内避難民支援は手が届きにくく、その一部が今も海外に難民として逃亡し、タイには毎年1万人が難民として逃れてくる。
UNHCR(国連国境難民高等弁務官事務所)の調査によれば、タイに逃れてきている難民のうちの6割が自分の住んでいた村を追い出され、住んでいた村の周辺(ジャングルなど)を数週間から数ヶ月間ほど逃げ回った後、やむを得ずタイの国境に逃れてくるのだという。
[2] 当事業の目的・意義 1.冬の寒さを防ぐ
12月〜2月の寒冷期における朝晩の冷え込みは厳しく、0度近くまで気温が下がることもある。例えば、SVAのメーサリアン事務所があるタイ陸軍事務所のデータによれば、標高700mのメーサリアンですら、1999年12月には最低気温3.3度を記録した。SVAの活動する難民キャンプの一つであるメコンカ難民キャンプの標高は900mで、かつ山岳地帯である事から、メーサリアンより寒い事が推測される。さらに、難民の人々の家屋は、竹とユーカリの葉で作られている。木材、コンクリートのような半永久的な建材を使用する事は、難民キャンプでは一切認められていない。よって、夏の暑さをしのぐには適切な建物でも、冬の寒さをしのぐ事は出来ない。しかも、東南アジアの人々は、高温の中で生活しているので、日本人に比べて、同じ寒さでも体感温度がより寒く感じるのが一般的である。
2.冬物衣類の絶対的な不足
今回、SVAの冬物衣料の配布にご協力いただくBBC(Burmese Border Consortium)は、タイ国境に移住する全てのミャンマー難民に対して、食料・住居の材料を配布している。衣類に関しては、昨年の冬に、冬物衣料はもっとも寒い一部の難民キャンプに配布されただけであり、絶対数が不足している。特に、難民にとっては、冬物衣料は一着持っていれば良い方で、未だに持っていない難民も多い。
3.呼吸器系の疾患を防ぐ
難民キャンプで医療活動に従事するドイツのNGOであるMHDによれば、冬は通常より3割前後風邪や肺炎などの呼吸器系の疾患が増えることが報告されており、冬物衣料を着用する事により寒さを防ぎ、その結果、風邪や肺炎などの呼吸器系疾患を防ぐ。
4.日本国内での開発教育(地球市民教育)の推進
物資を送る援助活動には限界もある事は否定できない。しかし条件さえ整えば、難民のニーズを満たし、市民参加の活動となりうる。そういった意味において、当事業は、市民の誰もが参加できるものであり、難民問題をはじめ世界に起きている地球規模的な問題に対して、市民が主体的に参加できる場を提供するものである。
しかも当事業は、単に衣類を集め現地に輸送するだけでなく、国際協力活動の重要性を考え、問題意識を深める地球市民教育の一環として考えている。そのために、参加者に輸送費を募り、あえて面倒な衣類の仕分け作業、梱包作業を行い、国際理解のための体験学習の場を提供するものである。その結果、豊かさの中で喪失しつつある、物を生かす事を学ぶことにもつながる。
5.ミャンマー難民にスポットを当て世界の難民問題を考えるきっかけとする
日常生活においては難民問題を考えにくいが、この活動を通して、10年以上にわたり避難生活をしているにも関わらず忘れ去られているミャンマー難民にスポットを当て、その問題について考えるきっかけとする。さらに、ミャンマー難民問題への理解促進を通じて、世界に2千万人以上存在する難民問題を考えるきっかけとする。
6.ボランティア活動の推進(「ボランティア国際年」と関連して)
2001年は「ボランティア国際年」であり、日本はその提唱国として、国内外のボランティア活動を推進させる事が世界から注目され、期待されている。当事業は、海外と国内の活動をつなぐ重要なボランティア活動としての取り組みが期待されている。

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