平成19年度
2月定例会・涅槃会



2月定例会
〜声明練習

 平成20年2月18日(月)、鴨川市長安寺様に於いて、2月定例会および釈尊涅槃会法要を行いました。

 午前10時より定例会を開催。今月は大本山総持寺で副悦(修行道場における修行僧の監督責任者である「維那」の補佐役。維那は別名「悦衆」とも言う)を務められた、富津市海龍寺 大山文隆師を講師に、声明練習を行いました。

 はじめに、大山師が用意された資料を見ながら細かい説明を聞き、その後実際に声を出して練習します。声明は修行中や各種法要等で何度も耳にしたことがありますが、節まわしが複雑なことや、人によって節の表現が違うため、大勢で声を合わせるのは大変です。大山師よりそれぞれの節についての細かい説明と実演をしていただき、繰り返し何度も練習を行いました。

大山師による実演 基本的な節回しを練習
動画:講師実演 全体練習


 昼食をはさんで、午後1時からは梅花練習。今月は、この後の涅槃会法要で詠讃師を務める庄司徳潤師が講師を務め、先月練習した「大聖釈迦如来涅槃御和讃」の復習を行いました。

梅花講習 講師 庄司徳潤師 手で拍をとりながらお唱えする



涅槃会

 梅花練習の後、涅槃会法要の進退習儀を行い、午後3時より本番の釈尊涅槃会法要を修行しました。

殿鐘三会大衆上殿(三会中配香) 法要開始の鐘を合図に各配役の大衆が上殿
殿鐘 法要開始の合図 両班

七下鐘導師入堂 送迎に先導され導師入堂
送迎を先導に導師、侍者、侍香入堂 導師入大間し、一礼

上香三拝 導師、はじめに香を焚き、三拝
線香を献じ、香を焚く 上香三拝

湯食三拝
親金菓茶三拝
 次に蜜湯と浄飯、続いて浄財・菓子・お茶を供え、各三拝
           詠讃師「大聖釈迦如来涅槃御詠歌」奉詠
湯食三拝 伝供 侍者から導師へ

伝供 導師から侍香へ 詠讃師 独詠

拈香法語 導師、釈尊入滅を偲ぶ法語を奉読し、改めて香を焚く
導師 法語を奉読し、進前焼香

開班 両班、須弥壇に相対し並列
検炉 維那、出班焼香の前に香炉の火を点検
開班 維那 香炉の火を点検し、拝請の位につく

出班焼香 維那の拝請に従い、導師より順に進前焼香
大衆九拝 全員でお拝を九回(最も丁寧な作法とされるお拝)
閉班 両班、元の位に還る
導師より順に拝請する 進前焼香

両班の焼香 大衆九拝

宣疏跪炉 維那、疏を奉読。導師は香炉を捧持して長跪 動画
納疏
 維那、疏を定位に納める
維那 宣疏 維那宣疏中 導師は香炉を捧持し、香を焚く

聖号 全員で「南無本師釈迦牟尼佛」を唱和
遺教経行道 動画
回向
普同三拝
参道

読経 行道



導師  畠山賢陀師

会場主 大山文隆師

両班  落合佛心師

仝   新野利行師

仝   四十澤承順師

仝   松山健雄師

仝   渡邊信行師

維那  浅野太露師

侍者  房田清光師

侍香  畠山文隆師

堂行  山本文龍師

殿行  戸田信也師

仝   殿城太寛師

詠讃師 庄司徳潤師




平成19年度 涅槃会


〜青年会員の感想〜

山本文龍師 2月18日、鴨川市の長安寺さまにおいて行われた2月定例会、釈尊涅槃会法要に参加しました。定例会では、声明練習として講師の大山文隆師より、声明の基本的なことから、まる節、ろ節、る節などの節まわし、それからアタリや発声のコツに至るまで、わかりやすく教えていただきました。

 普段、大般若会等の法要で「散華の偈」くらいしか耳にすることのない私にとっては大変勉強になったとともに、声明の素晴らしさを身近で聴いて感じることが出来ました。

 午後からの涅槃会では配役につかせていただき、あまり経験のない私は緊張しましたが、青年会の会長様はじめ皆さまから親切に教えて頂き、なんとか務めることができました。

 凛とした法堂での緊張感ある三仏忌法要、とても貴重な経験となりました。

鋸南町 存林寺内 山本文龍 合掌


信ずる心あればこそ

鐘が打ち鳴らされ、詠讃歌の奉詠が始まる。詠讃歌は門外漢の私だが、習ったばかりの歌をそれでも一心にお唱えするうち、自分の心が自然と高まっててくるのを感じる。

送迎に導かれ、上殿する。歩みゆく先は、平素の法要随喜とは異なる。法堂の中央だ。
凛とした空気。上殿を待つ、配役の諸兄弟(ひんでい)。十方全てからのまなざしを感じる焦点のその位置に、私は歩みを進めた。

供えものを献じ、恭しく香を焚き、柄炉を棒持して釈尊を見上げる。法要中最も敬虔な瞬間を味わう。再び釈尊と私の視線が交錯し、私の緊張は最高潮に達した。

この緊張は、配役の困難さゆえではない。釈尊と相対する私に、遮るものが全くないからだ。釈尊の眼差しを一身に受ける私は、見えないところまでびっしりと汗をかいていた。

「全て、観られている」私の中に、じわりと、畏れあるいは焦りにも似た感覚が生じる。逃げ出したいような、泣き出したいような感覚すら覚えた。

否応なしに考えさせられる。自らの日常態はいかなるものか。
たまたま導師としてそこにいる。しかしそれだけの資格のある、自分なのであろうか。
反省することこそあれ、堂々と自信をもって言い切ることのできない自分がそこにいる。釈尊の前に進みでて、最も感じたことは、「恥ずかしさ」であった。

生やさしいものではない。
作法進退を間違えなかったから、それで良いというものではない。
導師を勤め、かえって明らかになった、自らの未熟。
信ずる心あればこそ、今後の精進を誓う。そんなひとときであった。

市原市 龍本寺 畠山賢陀 合掌


●会長のコメント●

 今月の定例会のテーマは「声明(しょうみょう)」。声明とは、仏典に節を付けて唱えるもので、音楽の原点とも言われる古典音楽です。今回は、大本山總持寺安居中に声明を熱心に勉強された、富津市海龍寺の大山文隆師に講師をお願いし、詳しい資料をもとに解りやすく丁寧にご指導いただきました。

 声明は様々な法要でお唱えしますが、一人で唱える機会があまりないためか、関心を持って勉強されている方は意外に少ないようです。今回の練習を機に、少しでも声明に親しみを持っていただければと思います。

 午後からの涅槃会法要は、各配役の方が習儀と勉強の成果を発揮して立派にお勤め下さいました。

 様々な法要には、それぞれ大切な意義があり大事な修行でもありますが、我々はついつい法要を“行う”ことだけに主眼を置いてしまうことが多く、「間違ってはいけない」「失敗してはいけない」と言う思いが先に立ってしまいがちです。作法を重んじ儀式を厳かに勤めることは確かに大切なことですが、作法や儀式を追求することだけに囚われることなく、その法要の意義や趣旨に対する理解を深めることが大切ではないかと思います。

 今回、役を経験された方は、この経験をぜひ更なる一歩のために活かして下さい。


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