自転車に乗って                大泉寺 徒弟 森田英隆

 最近、自転車に乗っていた頃のことをよく思い出す。

 4歳か5歳の頃、生まれて初めて貰った自転車、それは兄のおさがりではあったけれど、これに乗ってどこまででも行けるのではないかと思ったものでした。それまでは、自分の足で歩ける範囲でしかなかった世界が限りなく広がっていくような思いがしました。

 そのころ再放送で放送されていた「西遊記」というテレビドラマになぞらえて、友達どうしでそのキャラクターになりきり、行ったことのない街へ、自転車で冒険するということをよくやっていました。これを「西遊記ごっこ」と言っていたと記憶しています。

 「ごっこ」というほどかわいいものではなく、特に目的地があるわけでもないし、地図も持っていないので、帰り道がわからなくなることが多々ありました。4〜5歳の子供が夜になるまで帰ってこないとあっては、今思えばどれだけ両親に心配をかけたことかと思います。ですが、たとえこっぴどく叱られたとしても2〜3日したらまた「西遊記ごっこ」は復活していたのです。

 江東区にあるお寺にお手伝いに行ったときのこと、次々に建設されていく高層マンションを見ながら、
「子供が増えて賑やかになったのではないですか。」と聞くと、
「確かに子供の数は増えているようだけれども、外であまり見かけることはない。」とのこと。


 「危ないから子供だけでは外に出せない」といったところでしょうか。確かに私のいるお寺の近くの小学校にも、下校時間になると送り迎えの親御さんの車がずらりと並んでいます。私が小さかった頃よりも、今時の親御さんの心配の方がより深刻になっているのでしょう。

 長い月日をかけて段々と窮屈になってしまった時代の針を、少しずつでも戻していけるように、子供たちがもっとのびのびと「冒険」できるような世の中になるように「大人」となった私たちが努力しなければならないと感じています。


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