うわさを確かめろ!              長興院 副住職 宮下晴祐

 檀家さんからの情報をもとに、夜な夜な田んぼに出向いていた。

 昨夜も目撃情報の多い場所に車を走らせた。車を停め外に出ると、蛙の大合唱が響いている。遠くから聴く合唱は一つの音として耳に届くが、あぜ道のアリーナ席に来ると、それぞれの個人パートが聴こえてくる。「あいつより俺の声量はすごいぜ〜」そんな意地の張り合いのようなライブに圧倒され、気分はリサイタルに呼ばれたのび太のようだ。

 それを見るには明る過ぎる夜でしたが、うわさは本物でした。
満月の月明かりを手で遮り、山裾の方に目を凝らしていると、幻想的な小さな灯りが飛び交っています。しばしそれに浸っていると、また剛田タケシが「そんなものより俺様の歌声だろ?」「ボェ〜〜ッコ!」「ゴェ〜〜ッコ!」と強く熱唱する。
 田舎暮らし万歳な夜でした。


 蛍が戻ってきたのは休耕している田が増えたからだそうです。稲作では食べて行けず、勤めに出る農家が増え、結果農薬の量が減り、環境が戻ったということなのでしょう。
 しかし、昨今の食糧問題なども有り、米の価値が再び上がれば、あの灯りも又目にする事が難しくなる日が来るのでしょう。


 エコロジー「人間生活と自然との調和・共存」とあります。人間も生態系の一員であること、生かされていること・命を頂いていることを強く自覚しなければなと思います。


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