戦国武将                   大福寺 住職 小暮宏堂

 最近、本屋で時代小説をよく目にする。「篤姫」の人気のせいか若い人も時代物に興味を持つようになったのか?私も時代小説は好きな方、中でも戦国時代、「織田信長」がお気に入り。戦略といい、日常の行動といい、人々の理解の幅を超えたカブキモノ振りは痛快だ。

 天下をほぼ制覇した頃、好奇心旺盛な信長は、当時珍しかった舶来品を好んだらしい。ビロードや虎の皮、鉄の西洋鎧。とても贅沢な格好をしていたが、決して贅沢三昧を志向してた訳ではなかった。

 若い頃、父の葬儀に参列する時、汚れた衣を縄で縛り伸び放題の髪は、藁で縛る。しかも焼香せず御香を位牌に投げつけるなど分不相応な振る舞いには周囲も戸惑ったという話は有名である。

 また戦いに関しても色々。世に名高い桶狭間の合戦は、陽動作戦と雨天を利用した奇襲作戦。敵の今川軍は四万の大軍。対する織田軍は二千余り。それで当時の勢力分布を根底から覆す様な勝利を収めた。次いで武田との勝敗を決めた長篠の戦い。新兵器鉄砲を多用した戦術は、その後の戦術変化に多大なる影響を与えた。

 そして最期、本能寺での自害。若い頃から問題児、比叡山の焼討や敗者の一族は乳児までも殺してしまうなど、酷い事もしてきた人物では、あるけれど、時の頂点を極めた人でこれ程進取の精神に富み、柔軟な思考を持っていた人は他にいないと思う。

 時代を駆け抜けた武将「織田信長」。現在では出会えない男の中の男だ。


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