歳月(としつき)いつしかたそがれて     新井寺 副住職 松井量孝

 さしたることもないままに 今日のこの日が過ぎていく

 一日生命を消耗して もったいないとは思うけれど

 くやんでみてもかえらない 

 家内安全、火の用心 無事息災でよかったと

 せめて自分をなぐさめる       (「もったいない」やなせたかし)

やなせたかしさんは、「アンパンマン」の作者です。わたしは、毎年、暮れのころになると、この詩を思い出します。「いま」を生きること、「無事」ということに感謝をすることを教えてくれる詩だと思います。


 いたづらに 過す月日はおほれど

    みちをもとむる 時ぞすくなき

という道元禅師さまのお歌と、どこか、似ているような気がします。


お釈迦さまは、

 「いま」を一生懸命に、真剣に生きなさい

と仰いました。


河井寛次郎という陶芸家は、

 過去が咲いている今

  未来の蕾で一杯な今

ということばを残されました。


「あなたは『いま』を一生懸命に生きていますか」と尋ねられたとき、必ずしも、いつのときも、「はい」とは答えられない自分がいます。「いま」というときを真剣に生きようとするとき、あぁだ、こうだと考えているうちに、次の一歩が踏み出せない自分がいます。「いま」ということばには、いろいろなこと(意味)が込められていると思います。

ある老師さまが、「『いま』を生きようとするとき、大切なことは、過去を引きずることなく、未来を背負い込まないことだ」と仰っていました。

わたし自身、「『いま』を一生懸命に、真剣に生きる」ということが、どんなことか、ほんとうには、まだわかっていないのかもしれません。そういう自分に、そして、新しい年を迎えるみなさんに、このことばを贈りたいと思います


 もし本当にやりたいことがあって、

 少しでも可能性があるならば、

 とりあえず力いっぱい突っ込んでみたい。

 もしはね返されたのなら、

 それはそれで何かを学ぶことができるはずだ。    (写真家 星野道夫)


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