【積み重ね】 浄禅寺 住職 山本崇文 |
少し前の話。 フジテレビの番組で、講師の先生を呼んで腹式呼吸の発声法の話題を取り上げていた。我々和尚にとって腹式呼吸は避けては通れない事なので、食い入るように見てしまった。 その先生が言うには、普段の会話で腹式呼吸をしていないのは日本人だけらしいのです。その日頃の積み重ねで、腹式呼吸をしようとしてもなかなかできない。日本語がその原因らしいのです。例えば{これから自分で発生してみてください}「こんにちは!」と「HELLO!」って、比べてみると日本語にはイントネーションがないんですよね。ところが関西弁にはイントネーションがあるのです。・・・「毎度おおきに!」って。だから関西弁は声が大きく出るらしい。普段からイントネーションある言葉をしゃべっているから関西の方は外国語のイントネーションを関東の方より早く会得することができる。 知らず知らずにこんな積み重ねしてきたから、腹式呼吸がなかなかできないだ~。すなわち、その分もできるようになるには毎日の地道な発声の積み重ねが必要なのですね。 さて、その数日後、ついにイチローが大リーグ史上初の9年連続シーズン200本安打という前人未到の快挙を達成し、108年ぶりに記録を更新した。このニュースに日本中が歓喜に沸いた。 この以前から、イチロー出演のNTT東日本のあるコマーシャルが放映され、駅の構内にもポスターが貼られていた。 イチローはなぜ、 同じ毎日をくり返しているのに 未来をつくれるのか。 という問いにイチローが 「確かな一歩の積み重ねでしか、 遠くへは行けない。」 というものだ。 他のインタビューの際にも 「小さい一歩の積み重ねが、とんでもないところへ行けるただひとつの道だと思う。」 と述べている。 このコマーシャルが気になって気になってしょうがなかった。 あれ!! ふと思った。 人間は本来心の奥底に持っている仏心を、勝手わがままの生活をして忘れ去り、苦悩のもとをつくり出している。このことに気づき、益々進歩発展を遂げるように日々の行持を一つ一つ積み重ね、真の人間の尊さや真実に生きる価値を知る。 なるほど。イチローは野球に出会い野球を愛し、日々の小さい一歩を積み重ね、どんな苦悩にも耐え、自分の潜在能力を発揮して最高の今を作り出し、そこからさらに進歩発展を忘れずに積み重ねを続けている。だからこそ大記録を達成できたのだろうし、またこれからも新たな偉業を達成していくでしょう。 |