過信】                  龍湖寺 副住職 菊地正浩

 最近、新聞の記事で、元F1レーサーの片山右京氏が、富士山で遭難したことを知りました。片山氏と同行したのは、自身が経営する会社の社員2人で、2人は氷点下24.6度、荒れ狂う吹雪の中、テントを飛ばされ、凍死に至り、片山氏は1人では救出できず単独で下山した、とのことであります。


 私はこのニュースを知り、自分自身が経験した、ワンダーフォーゲル部での遭難事故が脳裏に蘇りました。毎日厳しい練習に耐え、体力、気力共に実し、山登りには自信に満ちていた3年の夏の出来事でした。まさか自分が遭難するとは・・・という気持ちで当時はいっぱいでありました。


 片山右京氏は、ヒマラヤ山脈はじめ多くの山岳の登頂経験から、自分は大丈夫、という自信からくる<過信>が心の隙間に存在していたのでなかろうか、と私は自分の経験から想像します。寒冷前線の接近による天候の激変に対処できず、2人の尊い命を失うという結果を招いた事は残念な事です。


 近年、登山は身近なものとなり登山人口は増加の一途と聞きますが、経験豊富な人であっても、身近にある低山であっても、十分な装備と天気図の確認等の事前の注意により、遭難は防止できるはずです。自分は大丈夫という<過信>には要注意であること再び思い起こすニュースでした。



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