【田舎のお寺】             長香寺 徒弟 佐粧 正道
 田舎のお寺に私は住んでいます。


 学生の時はあまり好きではなかった小さなお寺への思いは、私が僧堂へ修行に行ってから変わりました。


 修行中、特に初めの約三ヶ月間は友達や親とも連絡をとれず、毎日同じ様な事の繰り返しの中で、時々田舎のお寺の事を思い出すようになりました。


 庭では近所の子ども達が遊んでいて笑い声が聞こえてきます。その子どもの中には、小学生の頃から高校生になってもお参りにきてくれる子もいます。子ども達が自然と集まり、遊べる場所として存在している事を嬉しく思います。


 本堂では近所のおばあさん方がお茶をしています。おばあさん方の何気ない会話から、人生においての大切な知恵や人としてのあり方などを学ぶ事ができます。外を見ていて、人が通れば声をかけ、一人また一人と人が集まってきます。人と人との繋がりはこのようにして広がっていくのかもしれません。


 本堂の軒ではツバメが巣を作り、子育てをしています。この、田舎だけど、海と山に囲まれている美しい自然が当たり前だと思っていた環境は、家を離れてみて有り難さを感じられるようになりました。


 大きい立派なお寺もいいけれども、みんなが気楽に遊びに来れる田舎のお寺も、やっぱいい。


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