平成19年度 6月定例会

〜障害者高齢者体験学習〜


 平成19年6月5日(火)、6月定例会を行いました。午前10時半より君津市徳常寺に於いて梅花練習。今回の講師は佐倉市養昌寺 房田清光師、「正法御和讃」を練習しました。

梅花練習 講師 房田清光師 練習風景


 午後は君津市保健福祉センターにて、障害者高齢者体験学習を行いました。君津市社会福祉協議会の松尾さんに講師をお願いし、はじめに福祉とは何か、そして国や地域での福祉の現状と、社会福祉協議会での活動等についてご説明いただきました。

介助方法の説明

 説明をお聞きした後、まずはじめに車いす体験です。操作法を教わり、我々も車いすに乗ってみます。

 何の障害物もない部屋の中では楽に操作することができました。ところがすぐに、そんなに簡単なものでないことがわかりました。

 部屋を出てすぐのところに階段があるので、車いすに乗ったままでの昇降の補助を練習しました。車いす1台に対し4人がかりで補助をしましたが、補助をする方もされる方も、内心ははらはらどきどきです。

階段での介助法の説明 4人で行う

 全員が補助の練習をした後は、エレベーターの乗り方についても教えていただきました。狭かったり、他に人が乗っていてエレベーター内で切り返すことが出来ないときは前進で乗り、バックで降りるそうです。また同乗の人は、乗り降りの途中でドアが閉まってしまわないよう注意します。

 今回のように、エレベーターが無くても比較的階段の幅も広く、補助をする人が多くいる場所であれば安全に移動が出来ますが、そうでない場合、車いすの人はその建物内を移動することが出来ません。身近にある建物がどんな人にも優しい造りになっているか、改めて考えさせられました。


 センターの玄関を出たら、次はいよいよ屋外での車いす体験です。二手に分かれ、郵便局など日常良く利用する施設まで行ってみました。

車いすに乗って屋外へ 車いす体験を行う会員

段差を通過する なかなか上がれない

 すると、多くの会員が歩道の上がり際につまづき、乗り越えるまでに苦労しました。普段歩いているときは気にならない高さの段差でも、車いすだと簡単に引っかかってしまうのです。横断歩道も危険な場所で、信号の無い所ではなかなか渡れませんでした。

段差の大きな所の介助法   わずかな段差も障害となる

ほんの数センチの段差でも
車輪が引っかかってしまいます

 途中、なだらかなスロープも通過しました。低い傾斜でも、上る時は自分の体重と車いすの重さで腕が疲れてしまいます。

 また下る時は、傾斜に任せて勢いよく下るとスピードを抑えることが出来なくなってしまい、大変危険です。一人で下る時は加速しないよう何度も車輪を止めながら下り、補助をする場合は、階段の時のように後ろ向きにゆっくり進むのが安全な方法です。

スロープを上り下りする スロープを下りる(後ろ向きに進む)


 一時間ほど車いす体験をした後、今度はガイドヘルプ(目の見えない方への介助)を体験しました。

 はじめにガイドの方法と注意点を教えて頂きました。相手はこちらが見えないので、話しかけるだけでなく手を取ることで自分の位置を教えること、手すり、壁やドアなどの障害物は触らせて知らせてあげることなどを教わりました。

ガイドヘルプの説明 実際に移動してみる

 今度は屋外に出てガイドヘルプを行います。「全く見えない」というのは想像以上に恐ろしいことで、自動車はもちろん、人や自転車の通過する音、道路のわずかな傾斜でさえも不安になります。足や音の感覚、そしてガイドしてくれる方の言葉と動きを頼りに慎重に進みます。

自転車が通過するだけでも不安になる 点字ブロックの上を歩く

 ガイドする側も、お互いの安全の確保と相手の不安を取り除くため、障害物や道路の状態を丁寧に伝えながら歩きました。相手は全く見えないので、あとどれくらい先に何a位の段差があるかなどを具体的に知らせます。点字ブロックもカーブなど道路の状態を知る重要な手がかりです。無事にセンターに帰れた時は、ガイドする側もされる側もほっとしました。


 最後に、関節が曲がらないようにする拘束具と重りを使って高齢者体験を行いました。手足や腰が自由に曲げられないので、床に座るとなかなか立ち上がれません。また、白内障を疑似体験するためのゴーグルも着用しており、視界がかなり遮られています。階段も一段ずつ、ゆっくりとしか進むことが出来ません。

高齢者体験 一度座るとなかなか立ち上がれない 階段を上がる

右足が曲がらないので降りづらい 曲がらない方の足から降りる

 20〜30代の我々は筋力もあり、今回は時間も短かったためそれほど負担にはなりませんでしたが、高齢者の方は日々この状態で生活しているのです。体験してみて、改めて高齢者が身体を動かすことの大変さを認識しました。


 昨今、バリアフリーやユニバーサルデザインといった言葉がよく聞かれるようになりました。しかし、まだまだ障害者、高齢者の方には4つのバリアー―建物・情報・制度・心(これが最も大きい)―があるといいます。そのバリアーを少しでもなくしていくために、まず自分自身はどうしたら良いか。今回の定例会が、福祉やボランティアを改めて考えるきっかけになればと思います。

〜青年会員の感想〜

庄司徳潤師(介助 畠山文亮師) 普段何気なく歩いている公道ですが、車椅子に乗ってみると、小さな段差や角度のゆるい坂、砂利道など、意外に走りづらい所が多く、「車椅子での生活はこんなにも大変なんだ…」と実感しました。

 また、目の不自由な方をサポートする『ガイドヘルパー』の体験でも、実際に目隠しをして公道に出てみました。目の前は真っ暗で車の走る音がすごく怖く感じ、段差や曲がる所を細かく声で指示し手を引いてくれる人が隣にいるにもかかわらず、最初は少し不安でした。神経が足の裏に集中しだしたのか、いつもより道の段差が足の裏で感じ取れる感覚になりました。

今回はサポートする側もされる側も、普段からよく知った人たちだったので、安心して身を任せられましたが、見ず知らずの人に身を任せるのは、おそらく不安なことだろうと思います。『信頼し安心できるサポート』を心がけることが、とても大切だそうです。

 色々と便利になってきている世の中ですが、見る視点を変えてみると何気ない所が全然便利になっていないことに気付かされました。

南房総市 福聚院内 庄司徳潤 合掌


浅野太露師街の中を車いすで移動してみて感じたこと。
一番欠けているものは、「視点」である。


 6月5日、君津市保健福祉センターにおいて行われた、障害者・高齢者体験学習に参加した。短い時間ではあるが実際に車いすに乗って街の中に出てみると、予想していた以上の大変さであった。これまで、バリアフリーになっている建物が未だに少ないことや、道路の段差などが障害者にとって危険となることは知識としてはわかっていたが、今回の体験学習で自らの体を通して感じることができた。

 道路のほんの少しの段差、ほんの少しの傾斜で車いすを進めることができなくなってしまう。普段自分が気付かない程度の段差や傾斜が、思いがけない障害物になる。そして横断歩道をわたるのは容易なことではない。車いすの操作に慣れていないとはいえ、信号が青になっている間に、横断歩道を渡り切るには時間的な余裕はない。以前、車いすの方が横断歩道をひとつ渡るごとにホッとすると、テレビのインタビューに答えられていたのを思い出した。

 バリアフリーになっている保健福祉センターの建物の中では感じることのなかった不便さや安全性の問題が、街の中ではそこかしこに現れてくる。すべてが「健常者にとっての当たり前」の中で作られていることに気付かされた。

 この研修を経験する前と後では自分の町を見る目線が変わり、大変有意義な体験でした。

君津市 最勝福寺内 浅野太露 合掌


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