平成19年度 海外研修旅行
【4日目/2月29日(金)/担当:新野利行】
さて、今回の研修旅行もいよいよ最終日となりました。この日は、個人的に一番楽しみにしていた紫禁城へ。
紫禁城と言えば、1987年に公開されたベルナルド・ベルトリッチ監督の作品、映画「ラストエンペラー」の舞台となった事でも有名です。清朝最後の皇帝である愛新覚羅溥儀の生涯を描いたこの映画は、世界で初めて紫禁城でのロケを行ったことで公開前から大きな話題となりました。中国政府の全面協力のもと、1日5万人もの観光客が訪れると言われる紫禁城を数週間借り切って撮影を行ったそうです。
当時19歳だった私はこの映画で紫禁城を見て、映像の美しさに引き込まれるのと同時に、前世の記憶が蘇ったかのような不思議な郷愁に駆られ、以来、いつか行かなくちゃ(帰らなくちゃ?)と思い続けていました。また、ここ数年、近代中国(清朝末期)を題材にした歴史小説にハマっていたこともあり、私にとって紫禁城は、「世界で一番行ってみたい場所」だったのです。
さて、ホテルを出た我々は、はじめに紫禁城の南の入り口に当たる天安門広場に到着。
天安門広場は1954年、当時この場所にあった倉庫や官庁などを撤去して作られた広場で、最大50万人を収容。数々の国家行事や歴史的事件の舞台となってきました。また、広場の両サイドには、中国の国会議事堂に当たる人民大会堂、毛主席紀念堂、人民英雄紀念碑、中国国家博物館などの国家的建造物が並んでいます。
広場に着くとすぐに天安門が見えましたが、広場があまりにも広いため、歩いても歩いてもなかなか天安門に近づきません。天安門の前の道路は横断できないため地下道をくぐり、ようやく入り口に辿り着きました。正面中央には、天安門の象徴ともなっている毛沢東の巨大な肖像が掲げられています。私はずっと写真だと思っていたのですが、よく見ると肖像画でした。
中に入った後も、瑞門、午門、太和門と幾つもの大きな門が続きます。観光客向けのサービスなのか、瑞門の上には黄色い龍袍を着た皇帝役の人が立っていました。
太和門をくぐり、いよいよ紫禁城の中心であり最も重要な建物である太和殿へ…と思ったら現在北京オリンピックに向けて改装中。中を見るどころか近づくことも出来ませんでした。残念…。とは言え、赤い城壁と瑠璃色の瓦と言った紫禁城の象徴的な景色や、乾清宮内部の絢爛な装飾を施した玉座や龍陛など、今まで映像や画像で見たり想像することしか出来なかった歴史の舞台を自分の目で生で見ることができ、大満足でした。
紫禁城の北端である神武門を出た我々は、すぐ目の前にある景山公園へ。
この景山は、明朝最後の皇帝である崇禎帝が、李自成の率いる農民反乱軍に攻め込まれ自害して果てた場所ですが、現在は公園になり北京市民の憩いの場になっているようです。公園内では、様々なサークルが太極拳やダンスなどを行っています。
公園内には国営の茶舗があり、勧められるままに店に入ると、売り子のお姉さんがマニュアルの棒読みのような日本語で説明をしながら数種類のお茶をいれてくれました。健康に良いとされるプーアル茶は、古ければ古いほど値段が高いため、飲用としてだけでなく投資目的での売買も行われていて、現在中国ではワイン投資ならぬプーアル茶投資が流行っているそうです。
景山公園を後にして、今度は胡同見学へ。
胡同(フートン)とは、細く入り組んだ路地のことで、現在オリンピックに向けて急速に市街化が進んでいる北京市内にあって、古き良き時代の面影を残す貴重な財産となっています。胡同内部は道幅が狭く入り組んでいるため、輪タクと呼ばれる自転車タクシーで移動するのですが、この輪タクに乗っての胡同めぐりは海外からの観光客に大人気で、今後も胡同の一部は観光目的で意図的に残されるようです。
さて、あっという間の4日間でしたが、初めての中国はとても強烈な印象でした。商業や交通が急速に発展しているにも関わらず、そこに暮らす人々の気質やマナーはとても前時代的で、そのギャップに戸惑ってしまいます。現在、中国では北京オリンピックに向けた大々的なマナー向上キャンペーンを展開しているようですが、そのポスターには「指示通り列に並び順番を守りましょう」、「所構わず唾や痰を吐くのはやめましょう」と言ったレベルのことが書かれていました。果たして中国はオリンピックを機に変わるのでしょうか。興味深いところです。