平成20年度 海外研修旅行
〜中国 天童寺参拝〜
【1日目/3月3日(火)/担当:武長一俊】
今回の海外研修旅行は3月3日〜6日の4日間、寧波での天童寺参拝を中心として道元禅師入宋の足跡を訪れた他、その前後に上海市、杭州市を観光するという日程でした。上海では玉仏寺、寧波では阿育王寺、天童寺。最後の杭州では浄慈寺、霊陰寺といった中国仏教寺院に拝観できたことは大変勉強になりました。また、私自身初めての海外旅行でしたが、テレビ等で間接的に観た世界と自ら直接現地で観て感じた世界の違いに、改めて情報だけに偏らない物事の見つめ方を考えさせられました。
初日の上海はアヘン戦争以降、欧米諸国や日本の租界地区として発展した経緯もあり、東洋と西洋の街並みが混在する港町。今では上海の、そして中国の新しいシンボルともいえる東方明珠テレビ塔がある地域を中心に近代的な建造物も増えており、中国を代表する大都市です。また来年2010年には万博を控えており、私達が訪れた時には街の至るところが開発途中でした。来年にはすっかり様変わりしている場所も多いでしょう。
空港に到着後、ガイドの王さんと合流。上海市内へはなんとリニアモーターカーでの移動でした。日本ではまだ乗ることの出来ないリニアモーターカーに驚いたのは勿論、時速430qという地上で体験する最速の世界に一同興奮しながら市内に向かいました。車窓からの風景はまだまだ一面に畑が広がり、時折見られる住居らしき建物は今にも崩れそうなモノが多く華やかな上海のイメージとはかけ離れていました。市の中心部に近づくにつれてイメージに近い景色になりましたが、郊外との差に何ともいえない寂しさを感じました。
上海市内からはバス移動。上海市内はもう完全に車社会という感じでしたが中国の交通事情は事前に聞いていた通り酷かった…。ガイドの王さんが「中国の道路ではマナーの良い、悪いではなくて、そもそもマナーが無いに等しい」と言う通り、突然の割り込みや一時停止しないなんて当たり前。車線変更でも曲がるのでも強引にいったもん勝ち的な感じです。国民性なのか、もしかして日本が行儀良すぎて世界ではこっちの方が当たり前なのか、交通マナーひとつとっても国によって違う事を目の当たりにしました。空気も埃っぽかったですが意外にも電気スクーターが多く、このスクーターで移動している人をかなり目にしました。速度は40q位で充電も家庭用コンセントから出来るようです。こういった面では日本よりも先に取り組んで庶民に普及していて驚きました。ただしブレーキは自転車並みだそうです。
まず最初に訪れたのは、玉仏寺という臨済宗の寺院でした。寺号の由来にもなっているミャンマーから贈られた白玉製のお釈迦様は、坐像と横臥像(涅槃像)の2体で別々の堂に静かに安置されていました。彩色を施された南方系の形をした仏像は、寺内の中国特有の金ピカの仏像よりも控え目で、日本の仏像とはまた違う落ち着きを持っていました。境内は外の通りから見るよりも広く、建物が密集した地区であったのに伽藍もしっかり整備されていましたが、文化大革命の影響なのか、どの伽藍もそれ程古さを感じませんでした。しかし、老若男女問わず多くの方がお線香を手にお参りをしている姿、法要中の僧達、生飯台に供えられたお米に群がる鳥、常に灯された大雄宝殿の灯火に、この国に仏教が活きている事を改めて実感しました。
次に向かったのは豫園(よえん)という庭園。豫とは「楽しい」という意味らしく開創は今から400年以上前なのだそうです。一時は衰退もあったそうですが上海の有力者達によって再建され、租界時代も中国人の居住区だったそうです。今ではこの区域全体にいろんな物を扱う商店が立ち並んでおり、小籠包の本家といわれるお店も有るそうです。日本のアメ横みたいな雰囲気で、観光客以外にも中国人達の観光スポットにもなっているのか、大勢の人で賑わっていました。ここでは、何人かで別行動。それぞれ買い物や散策を楽しみましたが、周りはほとんど言葉の通じない人だらけで(当たり前ですが)、自分が外国人なんだと初めて実感したのはこの豫園でした。
この後、昔の迎賓館を改装した伝統美術品の展示館を見終わると次はいよいよ夕食。この日は、基本的な上海料理をいただきました。八角などの香りに多少抵抗を感じながらも本場の中華料理を初体験した感想は、ちょっと不安。お腹大丈夫?という具合で、お腹を壊すことは一度もなかったのですが、この時点では旅行中、食事をおいしく頂けるのか心配になりました。けれども食事というのはほとんど慣れてしまえば問題ないのでしょう。このときの心配は的中せず、その後は特に気になるものではありませんでしたし、美味しいと感じるようになりました。わずか4日間で日本食が恋しくはなりましたが、中国の食事もまずまず食べられるようになりました。
食後はガイドの王さんの勧めで上海雑技団を見に行きました。大分空席が目立ちましたが、けして人気がないのではなく不況の為なのだそうです。雑技団だけではなく、リニアモーターカーも確かにガラガラ、タクシーを使う人も少なかったのは世界同時不況の波が中国にも及んでいる現実を物語っていました。
この日は最後に市内の夜景を見る予定でしたが、夜から雨模様になってしまい、また開発工事用のフェンスなども多かったために、残念ながら上海の夜景を楽しむことはできませんでした。ホテルに着き部屋に落ち着くと、窓の外には高速道路ジャンクションなのか太い道路のバイパスが見降ろせました。この一日で大陸のほんの一部を見ただけなのに、何ともいえないこの国の大きさを感じました。道元禅師はこの大陸に辿り着いたとき、はたしてどのような思いを心に抱いたのだろう。希望と不安を胸に行脚された若き日の禅師を思い描きながら、翌日の天童寺参拝を楽しみに眠りにつきました。